"SINGLE-ORIGIN OFFERS"
Top of Top / Light Roast
West Java, Indonesia
Loa Lactic-Fermentation / Natural
生産国:Indonesia
エリア:West Java
農園名:Loa
標高:1,500m
品種:Sigararutang
精製処理:Lactic Fermentation / Natural
Cupping Comments:
Floral, Rose, Strawberry, Pear, Dry Raison, Peach, Papaya, Cherry, Sugarcane, Improve, Honey, Molasses, Silky MF, Extremely Sweet, Rich in Overall
評価:Top of Top
本ロットの仕上げは「浅煎り」となります。
農園と生産者について
マンデリンやトラジャ、もしくはジャワロブスタ、希少価値のあるものだとコピ・ルアックなどが知られているインドネシアコーヒー。
現地エクスポーターとして異業種から参入したRational Idea 社(以下RI社)、そのCEOである黒田氏は慣例に捉われない取り組みで品質におけるブレイクスルーを達成、生産者と消費者の両側に立った豊かさをここ日本の地に芽吹かせています。
RI社との最初の出会いはWest Java、Kamonajg の女性チーム「Wanoja」によるトラディショナルなFW精製(現在も入荷継続中)で、これは同年COEコンテスト/オークションにおいて第2位という快挙を成し遂げたナチュラル精製ロットの兄弟にあたるものでした。その後輸入全量の仕入れとして追加された同ワノジャの「Extended Natural」と呼ばれる特殊精製ロット(以下Ex-N)の驚異的なフレーバーは発売後多くの方のもとへと届けられ、当方シエロにも数え切れないほどの賛辞の声とリピートオーダーが寄せられています。
今回新規取り扱いとなったLoa、こちらは上記ワノジャと同じくRI社が日本に紹介するスペシャルティコーヒーの農園です。
黒田氏はシエロの技術がフォーカスしている市場レンジ、その特性をよく理解してくださり、本ロットの到着の際は国内はじめての焙煎というご縁をいただきました。
インドネシアのコーヒーシーンは日本国内で古くからの常識にあるそれとは異なり、アチェ、ウェストジャワなど様々な産地の単一生産者が高い技術と精度を伴ったクリーンな仕事、そして挑戦的な精製の試みも含めた多彩なマイクロロットが競い合う地となっています。
Loaもまた、そこで特別な輝きを放った生産者のひとつ。初回焙煎分はシエロ自身のストックとサンプルとして黒田氏も含めた数名のビジネスパートナーに、2回目の焙煎分はごく少数のカスタマーへと届けられ、レスポンスとして驚きの声が届けられました。
抽出したてから冷め切るまで、そしてそこから時間経過を経たのちまで、色とりどりに姿を変えながらそのどれもが超一級であるという隙のない品質。精製の特殊性を差し置いても比類のない魅力を達成した本ロットをして、シエロとしては史上2銘柄目となる「Top of Top」の表記を添えてご紹介します。
品種と精製処理について
アラビカ系コーヒーのうち、最初に区分された単一種がティピカ。次いでティピカから突然変異で生まれたのがブルボン。
これら原種に近いアラビカ系コーヒーは風味のよさと引き換えに、病気への耐性の低さと生産性の不安定さという問題を抱えています。
これと対極にある、と言われるのが通称ロブスタ、正しくはカネフォラ種のコーヒー。栽培に適した標高はおよそ1,000mを境に高地のアラビカ、低地にカネフォラと分布します。低地にあるカネフォラの環境は高温多湿や虫害、ときには相対的に高い汚染のリスクと共存しなければならず、この種のコーヒーにはそれらに対する耐性と高い生産性を備えたものが存在します。
一般に風味特性で劣るとされるカネフォラですが、主にブルボン系で研究されたアラビカの風味とカネフォラの耐性を交配によって共存させ、アラビカ準拠の栽培環境でチューニングされた一連のコーヒー「ハイブリッド種」というものが存在しています。その中でも珍しい自然交配種のひとつが「Hybrid Timor」さらに研究されたそれがアラビカ在来種ブルボンと交配され完成したのが「Sigararutang」です。
カネフォラも既知情報の枠を超えて様々であり、塩味・雑味のひどい低級品から限界標高で育てられる最高峰「138」まで様々なものを体験してきましたが、ハイブリッドにルーツのある今回のシガラルタンから、いわゆるロブスタ的な要素は感知できませんでした。しっかりとハイライトの効いた力強い味わいで、ヴィジャサルチというブルボンの突然変異種がありますが、直感的にこれか同じく高級ハイブリッドのレンピラに近いかな?という印象はあります。ただ国籍も品種もたくさんの要素のひとつでしかないので、あまり意味のある情報ではないかと思います。
精製方法は「Lactic Fermentation / Natural」。外果皮と果肉を纏ったままのコーヒーチェリーが乾燥の工程までその姿を維持し、その糖や発生した酸を多く保存し得るナチュラル精製をベースにしたものです。この方法はナマモノである果肉が外気に触れる時間が長く、腐食や汚染のリスク、また樹木としての生育由来、土壌由来のノイズもより強く反映されやすいというリスクもあり浅煎りの対象としてはロット毎、ある程度の見極めが必要とされます。
ラクティクとは乳酸のこと。コーヒーの精製で必ず発生する発酵では何らかの作用者、酵母が多様な化学変化を起こさせます。ここでの多様性にボトルネックを設けることで、ある優れた結果を導く工程を再現できるのが人為的な発酵。(たとえば無酸素化でしか働かないものに限定させた嫌気性発酵もそのひとつ)本ロットでは酵母を乳酸菌主体とすることで反応の種類を、工程の一部を水中とすることで酸素量や温度、pH値をモニタリングして反応強度を、そしてチェリーの糖度をコントロールすることで反応の最大値を設計するものです。
もちろん乳酸菌だからヨーグルトができるわけではありません。分解されていくのは牛乳ではなく、コーヒーチェリー全体の糖やタンパク質です。
この意欲的にデザインされた精製は品質をつくり担保するための要素のひとつでしかありませんが、結果としてこのロットの風味はトロピカルで豊かなボディを持ち、酸の輪郭や透明度も艶やかに高く、多種多様に見え隠れする複雑なフレーバーを有するものとなりました。そしてそれと同等に、これほどの甘さを備えたコーヒーをこれまで経験しただろうか?と素直に驚いています。ひとつのトップエンドとして皆さんにご紹介するに足る、そんなロットとの出会いでした。
さすがです、黒田さん。
コーヒーの印象について
フレーバープロファイルと呼びますが、冒頭データシートのカッピングコメントがごちゃごちゃで支離滅裂になりそうだったのがこのロットです。
お湯と接触させる前=ドライ状態のストロベリーの印象は最後まで一貫し、お湯と馴染んだとき=クラストではブルーベリーや熟した洋梨が現れ、その後ローズの花香、メロンやドライレーズン、最初シュガーケインの印象だった甘さが加速度的に濃厚になって温度が下がる頃にはマンゴーやパパイヤ、そこに芯を置くようにチェリー・・・
温度の変化でどんどん表情を変えていく、そのあらゆるフェーズにとんでもない品質が担保されているクリーンさ。
多様で複雑なのに一貫している独自の世界。
神や妖精がかくれんぼをして遊んだら、きっとこんな景色なのかもしれません。
そんなコーヒーです。コーヒーじゃないかもしれません。
b2b取引(飲食店、オフィス、シェアスペースなどの仕入れ)をご希望の方は上記「 CONTACT / E-mail ▶︎」よりご相談ください。