"SINGLE-ORIGIN OFFERS"
Top Specialty / Light or Medium Roast
Mexico
El Columpio Geisha Red Honey
生産国:Mexico
エリア:Xico, Veracruz
農園名:El Columpio
標高:1,050m
品種:Geisha
精製処理:Red Honey
Cupping Comments:
Floral, Chamomile, Black Currant, Prune, Honey, Molasses, Velvety Mouthfeel, Sweet Long After, Improvement
評価:Top Specialty
本ロットの仕上げは「浅煎り」もしくは「中煎り」となります。
農園と生産者について
エル・コルンピオがあるのはメキシコの景観地、ヒコ。農園はオクタビオ・レイエス・スアレス氏とその一家による小規模な経営となります。
彼らが従来手掛けていた品種はこの地でメジャーな存在であるムンドノーボ、またティピカやブルボンなどでしたが、現地農業大学からの働きかけで近年、実験的にゲイシャの栽培が開始されました。
その環境はゲイシャの栽培地としては低標高ながら好条件に恵まれ、日本へ渡った初回ロットは後述のように高いポテンシャルを発揮。カスタマーからの声はシエロからインポーターを通じ現地へ届けられ、今期このレッドハニー・ゲイシャの少量生産へとつながりました。
品種と精製処理について
アラビカ系コーヒーの原種、エチオピアのアビシニカは複数の原生種が混在するミックスバラエティというのが実態です。
折に国外へ渡った種子や苗木が子孫を残し、そうした単一種が現在のティピカやジャバニカであり、最高級品種として知られるゲイシャ(採取地の地名による)もそのひとつ。植物学社によって1931年、ケニアに持ち出されたのがシンデレラストーリーのはじまりとなります。
その5年後、ケニアの地でようやく収穫された種子はタンザニアで生育が行われ、さらに20年の時を経てコスタリカの研究機関「CATIE」に移植。1935年のその日から、今もCATIEには「マザーツリー・オブ・ゲイシャ」その個体が存在します。
中米に入ったゲイシャはパナマへ、やがてその特別なフレーバーと最適な栽培環境に関する知識が蓄積される中、2004年のベスト・オブ・パナマオークション、エスメラルダ農園によって起こされた突然のビッグウェーブは歴史に残る事件となりました。
そこから現在に至る20年ほど、繰り返された研究と株分けでゲイシャの苗は比較的入手しやすいものになり、蓄積された栽培ノウハウは新たな生産者の参入を可能にしました。その裾野を広げ生産者の生活を押し上げながら、一方でエスメラルダをはじめとする有名農園のロットは名声と希少価値から投資ビジネスの対象となり、その価格は天井知らずの異様なものとなりました。
結果的にゲイシャという名を持つゆえに品質以外の要素で高値であったり、また売り手市場に目をつけた新規参入者が低い品質や荒い仕事のロットを出荷したり、それらに対し生産者や商社の自浄作用、仕入れを行うロースターの見極め能力のいずれもが不足しているのが現状です。
シエロとしてはこういった高価格帯のロットにおいて、2019年頃より「ゲイシャ商法」から一線を隔て、客観的評価による競技ロットことCOEなどに重きを置いてきました。
そんな中、エル・コルンピオとの出会いは2021年のこと。
メキシコから直輸入を行う業者さんと偶然知り合い、いただいたサンプルの中に入荷したばかりのゲイシャが含まれていました。
「ゲイシャには興味がない」そういう話を最初にしたはずですが、それでも試して欲しいと送り届けられたサンプルを焙煎、試飲してその場で国内全量の買い付けを決めました。そのロットがまだ収穫が始まったばかりの若い木々によるということも、その後知りました。
その衝撃の出会いとなったロットはオーソドックスなFW(水洗式)精製。今回新たに、レッドハニープロセスのコルンピオ・ゲイシャがシエロのために生産され、入荷となりました。
レッドハニーはハニープロセス(最初に果肉を除去した内果皮=パーチメントの状態で、発酵及び洗浄層を介さずそのまま乾燥)の中でも水を使用しない点で特殊な精製です。果肉の下にある糖を含んだ粘質層、ミューシレージと呼ばれますが、これをあえて全量残した強い粘性のあるパーチメントをアフリカンベッドに手で運び、好気性発酵を伴いながらの乾燥を3週間以上にわたり管理する。例えば運搬ひとつも通常のハニープロセスなら選別を兼ねた水路で済むところ、水溶性のミューシレージを失われるのを防ぐため人力へ。3週間以上にわたる乾燥もパーチメント同士が重ならないように攪拌するのですが、これも前半は強い粘り気との戦いになるなど壮絶な手間を要します。
コーヒーの印象について
酸の印象は心地よくも派手でなく、カシスやプルーンの繊細で熟した果実味をハチミツの甘さ、ベルベットの粘性が綺麗に包み込んでいるようです。ゲイシャらしいベルガモットの柑橘も持っていますが、そういった爽やかさというよりは艶やかで円熟したエレガンスを感じられる仕上がりだと思います。
コーヒーの花香というものは浅煎りで発現しやすく、他のフレーバーや酸度などと関係し合ってそれぞれの性格(ジャスミン、ハイビスカス、稀有なもので金木犀、少し表現が違うけれどブラックティーなど)となりますが、このロットで暗喩するところのカモミールは非常に珍しいものとなります。
ゲイシャなのに飲み疲れしない、飲み飽きない。なのに淹れるたびに感動をプレゼントしてくれるような、コルンピオ・ゲイシャとはそんなコーヒーです。
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