"THE MONTHLY"
Mar. 2023
Yirgacheffe Dawit Girma N
生産国:Ethiopia
エリア:Yirgacheffe, Gedeo
農園名:Dawit Girma(Owner/Shipper)
標高:1,950-2,100m
品種:Abyssinica
精製処理:Natural
Cupping Comments:
Floral, Lemon Grass, Pear, White Wine, Green Apple, Sugarcane, Development, Silky Mouthfeel, Sweet Long After
評価:Top Specialty Coffee
「ふたつのイルガチェフェ」完売しました。
200g x 2銘柄は、銘柄おまかせにてご注文いただけます。
200g x 2銘柄のペアリングもこちらからどうぞ。
最長で月末まで、在庫限りの販売となります。
産地と生産者について
エチオピア南部、ゲデオ県に位置するイルガ・チェフェ群。赤道に近く、標高は高く、その名を冠したブランドコーヒー「Yirgacheffe」は早い時期からスペシャルティコーヒーの代名詞のように知られていました。この地でのコーヒー生産が始まったのは1950年ごろ。これはエチオピアのコーヒー史では新しい部類に入ります。
モカの名で知られる「アラビカコーヒー原種」の一角ですが、そのモカとは紅海を挟んだ隣国イエメンの港の名前。古くそれはエチオピア(アビシニカ)モカ、イエメンモカの2種類が港に集積され、精製ごとにグレーディングされ出荷されていました。
イルガチェフェをして「ブランドコーヒー」と、上記で表現しました。これは15年ほど前〜つい近年まで続いたECX(Ethiopian Commodity Exchange)と呼ばれる国家機関による施策で、当時エチオピア全土のコーヒーはそのチェリーを持ち込む集積所(および精製所)が各地に用意れており、その集積所=エリアのコーヒーとしてカッファ、シダマ、イルガチェフェなどといった9種のブランドを定義され、農園や農協といった詳細情報に及ばないまでのトレーサビリティを確立して出荷されていました。
イルガやシダマの名がその名を世界に轟かせたのはこの時期で、まだスペシャルティコーヒー本来の透明性やカップ評価の影響力といった意味では黎明期にも至っていなかったというのが実際のところです。
ECXの緩和があったのは、ほんの5年あまり前のこと。SCA(Specialty Coffee Association)やバイヤーの働きかけに、国家を挙げた産業であるコーヒー生産のありかたが変わった大きな出来事でした。イルガチェフェブランドからも属していた農協や農家がプライベートロットを出荷するようになり、さまざまなエクスポーターが20ftコンテナをリザーブし、個性豊かなロットの麻袋が混載便で海を渡りました。
プライベートロットの確率により、集積所でトレーサビリティを失ったりミックスされてしまうことがなくなった環境の変化から、それぞれの生産者は品種の選定や精製の工夫など、さまざまな工夫を凝らすようになります。お手本になったのは中南米で、発酵の意図的なコントロールなども近年急速に一般化しています。
そんな中でCOE(Cup of Excellence)が2020年に初めて開催となり、受賞者をはじめとする各ロットの品質はエチオピアコーヒーの評価を更新し、ダイレクトトレードは生産者の生活とモチベーション向上に大きく貢献しました。
長く大規模な港集積ロットだったものがエリア集積になり、次いでダイレクトトレードにより顔の見える仕事に。この劇的な変化がたった15年の間に起こっているのがエチオピアという場所です。この地のテロワールも画一的な評価から生産者ごとの個性が見直され、「イルガは、こう」「シダマはこういう味」という表現は昔のものになりました。
今回スポット入荷した中からご紹介する本ロットは、農園オーナーでありエクスポーターでもあるギルマ氏から出荷されたもの。
副材料と漬け込んだり嫌気性発酵(刺激的な味をつくり易いが、本来のフレーバーを品質ごと上塗りしてしまう)というお化粧が横行し始めたエチオピアで、オーソドックスなナチュラル精製・アフリカンベッド乾燥で仕上げられた伝統的なコーヒー。そんな中で面白い個性を放つものとして、悩みに悩んでピックアップしました。
コーヒーの印象について
イルガチェフェ・ナチュラルらしさとは?ECX緩和以前、またその後も現地ノウハウや設備においてアドバンテージのある農協ロットから感じられるそれは、花香、ピーチ、ストロベリー、フィグといった熟した印象のある柔らかいフルーツに暗喩され、それゆえ程よい量感を感じさせるものでした。
「THE MONTHLY」にピックアップする本ロットは、そういった産地特性からすると「らしい、でもらしくない」印象を受けます。
まず、クリーンカップと表現される味わいの透明感。傾向としては重厚さを離れ、これは中米で見られるそれに及ぶ水準と感じました。甘く熟したフレーバーがマーブルに混じり合う・・というよりは、ひとつひとつのフレーバーが複雑ながらも明瞭に感じられやすくなっています。
地理的に言えば、東隣の新興エリア、グジに近いテロワールを感じます。どこかゲイシャのようなレモングラスが豆を挽いときから感じられ、高い温度帯では白ワインや洋梨のフレーバーが。温度が下がってくると突然シロップのような甘いとろみが現れ、そのまま微かな花香を伴った長い余韻へと続いていきます。
もうひとつのイルガチェフェ
今回の銘柄選定で、次点となったもうひとつのイルガチェフェ。こちらも農園単体のロットとなります。
そのフレーバー特性はこの地において典型的なもので、プラス要素としてグレープフルーツやバレンシアオレンジを感じさせるやや重心の低い柑橘があります。
全体に立ち上がりの早い生き生きとしたフレーバーを持ち、上記のように共存するシトラスは冷めてくるとダージリンのような心地よい渋みに変化。ロースター個人としては、ここが一番気に入ったポイントです。
「もうひとつのイルガチェフェ」は、上のリンクから 200g x 2銘柄 のオーダーの際にペアリングとして「Dawit Girma」とのセットを組ませていただきます。
ふたつのイルガチェフェ。THE MONTHLY 3月は、そんな形をもってひとつの景色を描きたいと思いました。
ふたつが隣り合うことで、景色になる。相対的であることで、その印象はより明瞭さを得る。そんなペアリングです。
共通の産地、共通の要素を持ちながら似て非なるもの。
激動のエチオピアから、その今を感じてください。
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