"WANOJA"
Java / Extended Natural
規格外のフレーバー、
磨き抜かれたベリー&ドルチェの協奏。
“Wanoja" RI Ex-N
生産国:Indonesia
エリア:West Java
農園名:Wanoja(RI Special Lot for Japan)
標高:1,500m
品種:Typica
精製処理:Extended Natural
Cupping Comments:
Lively, Bright, Floral, Hibiscus, Cinnamon, Cranberry, Pomegranate, Jammy Mouthfeel, Brown Sugar, Sweet Long After
評価:Top Specialty Coffee
農園と生産者について
インドネシアといえばマンデリン。という常識から、ある先駆者の働きかけによってブレイクスルーが起きました。
株式会社 Rational Idea(以下RI社)代表の黒田氏と、現地出身のレイモンド。来日当初、レイモンドにとって故郷の味であったインドネシアコーヒーが現地普及品に値するマンデリンやトラジャ程度しか供給されない状態は違和感の対象であり、そこに異業種参入である黒田氏から文字通り「Rational Ideas」が盛り込まれ、国際コンテストを戦えるレベルのジャワ・コーヒーが一層洗練された形で日本上陸を果たしました。
ジャワ島というとカネフォラ種(俗称、ロブスタ)の産地か、少し詳しい方でもジャバニカ種のルーツくらいの情報しかなかったと思います。
スマトラ島のマンデリンやスラウェシ島のトラジャなど、ほぼ深煎り用途オンリーで下位クラスと価格比較されるような銘柄に興味のなかったシエロはインドネシアからのシングルオリジン入荷をほぼパスしていました。
ワノジャとは現地の言葉で女性のこと。この農園のオペレーションは女性を主役に行われます。
最初の出会いは2021年クロップのFW(水洗式)精製で、その品質は圧巻でした。前述の「国際コンテストを戦えるレベル」との評価ですが、実際に2021年ロットのワノジャがCOE(Cup of Excellence)Indonesiaにて2位に輝くという快挙を成し遂げていたことが後日わかりました。味覚以外の情報をブラインドして行われる国際レベルのコンテストにおいて、この評価はワノジャが実力ひとつで世界の頂点に立ったことを意味します。
「RI Special Lot」の表記ですが、これはRI社が輸入商社ではなく現地エクスポーターであり、ワノジャから出荷された生豆を一度開封して再グレーディング、その工程をパスしたものだけがバキュームパックに形を変えて日本に送り込まれることを意味しています。なお、ここで選別を通らなかったものは別途回収し現地消費に回されるとのことです。
ワノジャのコーヒーはジャワの地産地消がこれまでの姿で、品質を磨き上げての日本上陸は関係者全ての夢のある挑戦です。FWの入荷実績からで全幅の信頼を置く黒田氏の協力を得て、今回はスポット生産となるナチュラル系特殊精製を全量契約にて入荷させていただきました。
精製処理について
Extended Natural、追加要素を持つナチュラル精製という意味です。
その工程は複雑で、まず収穫されたコーヒーチェリーはハードシェルの密閉タンクにCO2とともに封入(カーボニックマセレーションと呼ばれる)され、短時間の嫌気性発酵が行われます。ここで発生する嫌気性、つまり酸素のない真空状態での酵母の働きは、その酵母の種類により特殊かつ限定的なものとなり、好気性発酵とは発生する物質が異なります。
その後タンクは開封されず、今度はCO2を外部と循環させて無酸素のままチェリーゆっくりと乾燥させる工程が入ります。そうすることで発酵及び発生するCO2による加圧が起こる工程、発酵を停止させる工程までを真空状態のみにコントロールし、この時点で概ねナチュラルプロセスらしいジューシーさが形になります。
驚くことに、タンク乾燥を経たチェリーは果肉が収縮・剥離し、ちょうど予備乾燥を終えたブラックハニープロセス(果肉の除去時に糖を多く含む粘質層を100%残留させて乾燥に入るレッドハニープロセスを、さらに長時間の乾燥で発展させた精製)のような姿になっているとのことです。
なお、ここまでの工程はそれぞれ経過した時間までのデータが提供されていますが、模倣のリスクも考慮し、生産者の利益を守るため詳細は非公開とします。
工程の残りはアフリカンベッドでの乾燥になります。ある程度水分が飛んでいるので、ブラックもしくはレッドハニープロセスと同じコンディションに見える豆表面の粘質層は好気性発酵を起こすことなく、およそ20日を経て内果皮(パーチメント)から取り出され、出荷となります。
ハニープロセスのようで成分変化はナチュラルに近い。アナエロビックファーメンテーションのような100時間に及ぶ重い発酵は行われず、それ自体が主役ではない。ただ、真空下で乾燥までを進めた結果ナチュラル精製(果肉をまとったまま空気中で乾燥させる)で起こる成分変化を完全にコントロールし、この驚愕のフレーバーが誕生したというのです。
コーヒーの印象について
ベリー系の酸の中でも、本ロットのようにひときわ明るい印象をクランベリーに暗喩します。液体は温度が下がるほどに粘性を帯びて、それはまるでジャムのような印象。濃厚で量感はあるのに重さを感じさせず、どこまでも明るく、いつまでもその香りと甘さが口の中に残ります。
焙煎してみて驚いたのが、カーボニックマセレーションからごく稀に発現するシナモンフレーバーの存在。
これは完璧な管理のもと、発酵でCO2が過剰状態となり、タンク内が加圧されることに関係すると言われています。
シナモンシュガーのようなドルチェ感と、圧倒的フルーティーさ。コーヒーの既成概念はどこかに消えてしまうかも知れません。
多様な嫌気性発酵の一例として、このロットでは種子のタンパク質が糖質へと分解されています。結果的にこのコーヒーの糖度はブースト状態となるほか、ちょうどコラージュを受けたワインのように、タンパク質の減少したその液体は澄んだルビー色となります。また苦味・焦げ味を一切生じない浅煎りであっても、一部の焙煎豆の表層にうっすらと油が浮くなど、通常ではあり得ないことが起こります。ただしそのメカニズムについてはまだ説明ができません。
トップクラスの品質と、ある種規格外の特性とが共存するワノジャEx-N。
生産者、流通業者からシエロの技術へと、ひとつなぎのチームが送り出す渾身のロットです。
インドネシア・スペシャルティの真の実力をご紹介できること、誇りに思います。
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